風鈴

猫 サイエンス 哲学

返し刀

本を読む気にならなくて、車窓と景色の中間あたりを眺めている。焦点はどこにも合っていない。強いて言えば心中にフォーカスしている。

自分の中から何一つ言葉が出てこないという時がそう少なくない頻度で訪れる。言葉は絵を描く事と似ている。曖昧に滲んだ世界に境界線を引き、輪郭を与える。言葉を失うということは、輪郭を掴むことができずに曖昧なままの世界が私の周囲に、或いは身体を通り抜けたそこに在るということなのかもしれない。


同意と共感と称賛のみで構成されたコミュニケーションを信頼していない。恐らく私はその態度に媚を感じてしまうからなのだと思う。
筋の通った理由を添えてくれるならばいっそ否定してくれる人の方が安心できる。そこに誠実さを感じる。

但し、これは返し刀だ。
自分は相手に誠実さを以て接しているだろうか。
否定できない相手に対して、媚を売っていないだろうか。
事前に制御できないような感情や行動でも、反芻しその意味に気づいたり、または意味を与えることで自覚を促せると考えている。まずは自覚したい。誠実であるために。